貸した漫画

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 やっと手をつなげたのに、なにも進展しないまま先輩は卒業してしまって、私の気持ちもどこかへ消えてなくなってしまった。  そんな先輩を彷彿とさせるような、曖昧な態度と関係。  まだ先輩のほうがよかった。  手をつないでくれたから。  彼は、まだなにもしてくれない。  私の話に笑ってくれるし、彼も近況を話してくれるけど、ただそれだけ。  〝さっさと告って女だと意識してもらえばいい。好意を持たれてると判れば急に可愛く見えるもんよ、女ってのは〟  好きになったほうが負け、とはよく言う。  私は彼を好きになってしまった。  でもまだ負けたわけではない。始まってもいない。  〝じゃあ惚れさせなよ、その童貞を〟  ここへ来て童貞というのがアダになる。  こちらのアプローチを理解してくれないシーンが多々あった。  明らかなアピールなのに、汲み取ってくれない。  親友の言う通り、さっさと告白して楽になってしまおうか。  こんなもやもやのなかをずっと進んでゆくのは苦しい。  進んでいるのか後退しているのかも判らないままなら、告白というキッカケで一気に気持ちを晴らしたい。  向こうが私を好きでなくてもいい。  これから好きにさせればいい。  向こうが私を好きなら御の字だ。  とある映画の帰り、彼の運転する車のなかで私は意を決して告白した。
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