5人が本棚に入れています
本棚に追加
やっと手をつなげたのに、なにも進展しないまま先輩は卒業してしまって、私の気持ちもどこかへ消えてなくなってしまった。
そんな先輩を彷彿とさせるような、曖昧な態度と関係。
まだ先輩のほうがよかった。
手をつないでくれたから。
彼は、まだなにもしてくれない。
私の話に笑ってくれるし、彼も近況を話してくれるけど、ただそれだけ。
〝さっさと告って女だと意識してもらえばいい。好意を持たれてると判れば急に可愛く見えるもんよ、女ってのは〟
好きになったほうが負け、とはよく言う。
私は彼を好きになってしまった。
でもまだ負けたわけではない。始まってもいない。
〝じゃあ惚れさせなよ、その童貞を〟
ここへ来て童貞というのがアダになる。
こちらのアプローチを理解してくれないシーンが多々あった。
明らかなアピールなのに、汲み取ってくれない。
親友の言う通り、さっさと告白して楽になってしまおうか。
こんなもやもやのなかをずっと進んでゆくのは苦しい。
進んでいるのか後退しているのかも判らないままなら、告白というキッカケで一気に気持ちを晴らしたい。
向こうが私を好きでなくてもいい。
これから好きにさせればいい。
向こうが私を好きなら御の字だ。
とある映画の帰り、彼の運転する車のなかで私は意を決して告白した。
最初のコメントを投稿しよう!