エイプリルフールなんて嫌いだSS

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「じゃ、俺、そろそろ帰りますっ」 パソコンの電源を落として、コートを羽織る。 「ああ、お疲れ~」 「お先に失礼しま~す」  薄暗いエレベーターホールでスマホを見ると、時間はもうすぐ午後10時近い。エドワードからの連絡はない。 この月末は俺がかなり忙しいことになるという話は、もともとしていた。毎日、朝と夜にメールをくれていた。今朝も"今日は遅くなりそうだ"とメールで伝えていた。 だから気を使って連絡をしないでくれてるのか。いつもエドワードからばかり連絡してくれてるってことに、改めて気づかされて、今日は俺の方から"仕事が終わった"というメールをした。  すぐには返事は来ないだろうと見越して、夕飯も食べずに集中してた俺は、ビルを出ると近所にある牛丼屋に入った。もう家に帰って食事の準備をする気力などない。俺以外にも、疲れ果てたようなビジネスマンが数人、カウンターに並んでいる。 俺もその中に紛れ込み、定食を頼んでから再びスマホを見る。いつもなら、すぐに反応するエドワードからの返事が、今日に限って返ってこない。
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