第1章

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そう言って紫音は私を引き寄せる。 その甘い誘惑に負けたい気持ちを堪えて腕を解いた。 「今日は友達の結婚式なの。遅れるわけに行かないでしょ」 ベッドから降りてバスルームに向かう。 私は先月35歳になった。 今日結婚する友達が最後のひとりで、他は全て結婚し母となっている。 友達に会うたびに結婚しないのかと聞かれることが増えた。 しかしまだそんな予定は入りそうにない。 紫音とは3年近く付き合っているけれど、お互い仕事が忙しくてそんな話にもなかなかならない。 長すぎる春は成就しないと聞く。 .
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