第12章

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クラッシックが静かに流れるバーで、穏やかな表情を纏ったまま、誰がこんな話をしていると思うだろう。 私は運ばれたカクテルに手をつけることもなく、ただ夜景を見つめる。 紫音の視線は痛いほど感じるけれど、飲み込まれてしまいそうで顔を向けられない。 紫音のグラスが空になったタイミングで、静かにスタッフがそばにやってきた。 「同じものを」 「かしこまりました」 なにも知らない。 なにも聞いていない。 そんな澄ました微笑みを浮かべて離れていった。 .
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