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「だから不倫じゃなかったんだって」
「でもそのときは不倫だと思ってたんだから同じよ」
「……」
ぐうの音も出なくなった紫音は、大きなため息を吐いた。
別れを決意させてくれたのも樋口だった。
「それに、不倫がわかって別れ話をしていた頃、何度も私を慰めてくれたのは彼だった。彼がいたから私は前を向いてこられたのよ」
そうよ、何度も樋口が元気づけてくれた。
私が辛い時には、なにも知らない顔をして必ず現れた。
初めはあまりの能天気さについていけないと思っていたけれど、全て私を思っての振る舞いだった。
なんでも知っている風な河野にも助けられたけれど、やはり私が必要としているのは樋口だ。
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