第1章

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「そうそう、紫音さん。彼いくつよ。そろそろ40歳近いんじゃないの?」 「たぶん38歳」 「早くしないと幼稚園の運動会で、転んで恥かくわよ。若いパパには敵わないんだから」 少し膨らみ始めたお腹を擦る姿は幸せそのものだけれど、人の幸せはそれぞれだと言っていいだろかと悩む。 どう返したところで僻みとしか受け取られないので止めた。 「考えてないわけじゃないんだけどね。それよりほら、朋子がお色直しからそろそろ戻ってくるんじゃない?」 苦笑いで返しても全く察してくれる様子はない。 数年前なら未婚者も多く、結婚が必ずしもゴールじゃないと一緒に言い返す仲間がいたのに。 立場が変われば意見も変わる。 それが悪いとは言わないけれど、価値観を押し付けられると気が滅入ってきた。 .
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