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子供の頃、夏がくると必ず遊びにきていたその町を訪ねると、その頃とまったく変わらず。時が止まっているかのように感じた。
最寄駅からバスに揺られること一時間。山あいの小さくてのどかな漁村。
そこに“じいちゃん”は独り暮らしている。
もっともじいちゃんと言っても、正確にいえば祖父ではない。母方の祖母の長兄だ。
じいちゃんは生涯独身で当然孫もいない。
一方、僕の両親は早くに離婚し、父方の親戚とは疎遠。
なおかつ、じいちゃんの末の妹である祖母の連れ合い、つまり僕の本当の祖父は生まれる前に他界しているため、僕にとってはじいちゃんは文字通り本当に“田舎に住む祖父”という感覚だ。
最寄りのバス停から歩くこと二十分。
このあたりは都会と比べると随分涼しいとは言っても、日中に活動すればやっぱり汗だくになる。
額の汗を腕でゴシゴシと拭った。
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