1.僕

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「じいちゃん。久しぶり……」 子供の頃、いつも縁側から上がり込んでいた。 今日もそれに違わず、ドキドキしながらそちらから顔を出す。 ちょっとだけ、いやかなり照れくさい。夏休み明けに登校する時の気持ちに少し似ている。 じいちゃんは縁側から続いてる客間(といっても客人もせいぜい僕ぐらいなため、そこで生活すべてを完結させている)でゴロンと横になりテレビを見ていた。 「おお!ヒロキか、よお来たなー」 中学を卒業してからまったく来なくなっていたのに、じいちゃんはあの頃と変わらない笑顔で迎え入れてくれる。 それが嬉しくて思わず笑った。 僕が笑顔になるとじいちゃんはますます好々爺然とする。 「さぁ上がれ上がれ。暑かったろう。クーラー入れようかの」 「いやいいよ。暑いけど、僕暑いの嫌いじゃないし」 「……そうだったな」 僕のために昔買ってくれた、冷房機能しかなく今のエアコンと比べるととんでもなくデカいそれに向かおうとしていたじいちゃんは昔を思い出したのか嬉しそうに笑ってその場に座った。
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