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尾根の先に白い灯台がそびえていた。
灯台に灯りがともっている。
まっすぐにのびる強い光が、ゆっくりと回転している。
灯台の下で、木造の校舎がうす暗い影をつくっていた。
一階建ての細長い校舎だ。二棟、並列している。
校舎の前にぼんやりと暗い校庭があった。
門柱をくぐると、影のような子どもたちは、我先にと校庭に散らばっていった。鬼ごっこをし、鉄棒で逆上がりをし、ボールを蹴ってかけまわる。
犬たちも校庭に入ると立ちどまった。子どもとじゃれあったり、首や背をなでられたりしている。
……ここ……どこだ……?
引っ越してきた日、観光でこの灯台まで来たとき、下にはだだっ広い駐車場しかなかったはず。
校舎全体がうす暗い。影のように色素がなく、たそがれの空気に消えてしまいそうだ。
ぼくは、門柱に手をのばした。スカッと、手が門柱をつき抜けた。
……ない。
空気しかつかめない。
……幻……。
「――なにやっとるん?」
背中からしわがれた声がした。
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