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第一章:05
・・・
「バカな、バカな、バカな……ッ!」
隊長格のフェイス――今や部下は一人だけだが――は、走りながら
狂ったようにつぶやき続けていた。
敗走。見事なまでにみじめな敗走だ。雷久保番能こそしとめられたが、
その感情を奪ったフェイスを含め数十体が機能停止。雷久保の研究成果も
奪えず、アルカーも倒せずじまい。
だがなにより。
「フェイスに、裏切りものがでるなどッ――!!」
ありえない。ありえないはずだ。そんなこと――。
今、このフェイスは生まれて初めて感情を手に入れたことを後悔していた。
死の恐怖さえ尊く感じた己が、未知の感情に恐慌している。
混乱。認識の埒外の事象に、感情が定まらず暴れ狂っている。
とほうもなく気持ち悪いその感情に全身を支配されながら、夜の闇を走り続けた。
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