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僕は恋愛が苦手だ。
小中高と私立の男子校に通い、異性との免疫というものが全く無かった事
最近までスマートフォンを買わなかった事もあるが、ネットの世界でも身構えてしまう
かといって、男色という訳ではなく、バラ色のキャンパスライフや、異性と付き合う事
に希望を抱いている。
まぁ・・・実際には進展は無いが・・・
杉並区のJR阿佐ヶ谷から徒歩15分の築50年の家賃5万円の1Kのアパートに
大学進学と共に住み始めて、もうすぐ1年が経とうとしている。
高瀬雄飛(たかせゆうひ)は阿佐ヶ谷駅の南側のいちょう並木をジーンズに薄手のコートを羽織り、背を少し丸めがら歩いている。
黒縁の年季の入った眼鏡の雄飛は、いちょう並木に敷き詰められた濃い黄色の葉っぱを
みながら、東北の田舎町の景色をだぶらせた。
地元の仲間達の姿を思い浮かべていると、コートのポケットが振動した。
雄飛はぎこちない感じで、振動するスマートフォンを取ると、ディスプレイに映る
前山田槙(まえやまだしん)という文字を見ながら一瞬顔が歪む
「はい・・・高瀬です・・・」
誰が聞いても明らかにテンションが低いのが解るくらいの声で電話に出た。
「雄飛君・・・・アイスが食べたい・・・・」
「晩秋の時期ですが・・・・アイスですか・・・また物好きですね・・・僕は
付き合いませんよ・・・・」
「さて・・・・問題だ・・・・私が好きなアイスは何~かなぁ・・・」
「全く興味が沸きませんが・・・その問題・・・好きにし・・・・」
「綾瀬君にも声をかけていて・・・・これから買ってくるそうだけどなぁ・・・」
「あ・・・綾瀬・・・・・さんも・・・・」
その言葉を聞いてから、声が上ずる雄飛。
「そういう事だ・・・まぁ・・・僕は雄飛の味方だからな、コードネームは
黄昏の夕闇・・・落ち合う場所は、我らが部室・・・茨の園だ!!」
軍人の様に声を張る前山田は、台詞を言い終わらないうちに電話を切った。
「先輩・・・ちょっと!!」
雄飛は、ディスプレイに映る、通話終了の文字を見ながら、右手にはめている
大小の表示板があるクロノグラフを見る。
時間は、午後二時半を指していた。
「総武線直通の・・・メトロ東西線を使って大学まで、20分くらいかぁ・・・
スーパマルセイで買えば・・・三時には着く・・・・」
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