10番目の監視カメラ

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「今日はキレイな人いたかな?」  その日、Nさんは独り言をつぶやきながら、いつも通り監視カメラの過去の映像を操作しようとしました。  その瞬間、店内を歩く女性をモニター越しに発見しました。 「あれ? チャイム鳴ったかな?」  古い店であるためドアの上部に取り付けられた人感センサーの調子が悪く、客が来てもチャイムが鳴らなかったり、客が来ていないのにチャイムが勝手に鳴ることが度々ありました。  女性はトイレのある方向に向かっていきました。  Nさんは事務所から飛び出して、レジに立ち、女性がトイレから出てくるのを待ちました。トイレだけ借りて何も買わずに帰る客が多いため、レジに立つと無言の圧力になりました。ジュースの1本でも買わせることができたら御の字です。「いらっしゃいませ?」と掛け声をかければ、さらに圧は増します。    しかしどんなに待っても、女性はトイレから出てきませんでした。 「おかしいな?」  トイレに近づいて確認すると、ドアに鍵はかかっていなく、電気は消えたままでした。 「どこに行ったんだ?」  Nさんは胸騒ぎを覚えながら事務所に戻り、監視カメラの映像をチェックしました。  数分前に確かに女性は来店していました。  トイレに入っていく姿もしっかりと捉えています。  翌日、翌々日と同じ現象が起こりました。決まって夜の2時です。  監視カメラの映像を何度も上書き保存しているハードディスクに何らかの不具合が発生し、古い映像と今の映像が二重に映し出されているのかなとNさんは分析しました。
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