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「直接この目で確かめよう」
その日、深夜2時になる少し前に、Nさんはレジに立ちました。いつもと変わらず、客はほとんど来ません。2時を過ぎても何も変化はありませんでした。
「やっぱりハードディスクがおかしいのかな」と思った瞬間でした。
自動ドアが開いたのです。
「いらっしゃいませ」と言いかけて、言葉を飲み込みました。
誰も人は入ってきません。
Nさんはレジから飛び出し、自動ドアを開けて外を見渡しました。
駐車場に客の車は1台もなく、歩道を行き交う人すらいません。すぐ近くの交差点にある信号機が青に切り替わりましたが、渡る人は1人もいませんでした。
Nさんは首を傾げながら事務所に戻って、監視カメラを操作しました。数分前の映像をチェックすることにしたのです。
レジには自分の立っている姿が映っていました。そして驚くことに自動ドアが開閉した際に、女性はいつも通り店内に入っていたのです。
「マジかよ・・・・・・」
その女性はいつもなら左に曲がってトイレに一直線なのに、今日は入口の前でたたずんでいました。何も知らない数分前のNさんは、女性のすぐ脇を通り過ぎ、自動ドアを開け、外を確認していました。
首を傾げながら事務所の中に戻る自分の姿を、Nさんはモニター越しに眺め、身震いしました。
女性が自分の後ろを付いてきていたからです。
そのまま一緒に事務所の中に入ってしまったのです。
「うそだろ・・・・・・」
Nさんは目だけを動かして、ゆっくりと周囲を見渡しました。
もちろん事務所には自分ひとりです。
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