ストロベリームーン

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「潤!ナポリタンと卵焼きサンド3つずつね!大急ぎ!」 「鬼か!そんなに食ったら夕飯入らんどころか家に入んねぇぞ、悪いことは言わんからどっちかにしとけ!」 「潤ちゃん、ナポリタン大盛でねぇ!だいじょ~ぶでえっす!夕飯もしっかり食べま~す」 「ちゃん付けヤメロ!どんだけ食うんだ、呪うぞ」 「どんな呪い~?」 「腹が出て胸が引っ込む恐ろしい呪いだ。ざまぁみろ」 部活帰りの女子高生が三人、ケラケラと笑う。 この年頃の女の子の胃袋は、どこかの異次元に繋がっている。 財布の事情が許し、男性が見ていなければ、平然とパフェも追加するだろう。 「はいはい、ピーマン大盛りナポリタン3卵焼きサンド3!」 「潤、お客様に向かってその態度は何ですか。はいはひとつ!」 夕子さんのペンチのような指が、俺の脇腹をギリギリと抓りあげていた。 「はははい、いたた、それいたい、夕子さん」 喫茶店モリモトは、小さいけれども年季の入った洋風の造りだ。 凝った窓からは港が見える。 オーナーの森元さんは趣味の碁や釣りに勤しんでいた。 今では店の主はほぼ夕子さんだから、やりたい放題だ。 夕子さんお手製の編み物や人形がそこら中に飾ってある。 可愛いよりは怪しい寄りのそれらは、案外若い女の子には人気らしい。
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