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そのまま、俺の入院は数ヶ月に及んだ。
昔怪我をしたことのある左目は回復せず、右目の視力は残っていたが、視野の真ん中が大きく欠けた。
かなり重度の網膜剥離と診断され、治療をしても現状維持が精一杯だった。
読み書きや運転が難しく、人の顔や濃い色の見分けもつかない。
そんな状態でも、黒田さんや上司が会社に掛け合ってくれた。
丁度社長が代わった時期で、人手も足りていなかった。
会社に残ることは可能だったが、体調以上に気持ちが折れてしまっていた。
黒田さんや上司には心から感謝しながらも、俺は会社には戻らなかった。
前に述べた家庭の事情で、すぐに家に帰ることも躊躇われた。
蓄えを切り崩しながら、俺は友人知人の家を転々としていたが、それにも限界はある。
結局は故郷に戻ってきたわけだが、気持ちの晴れる日はなかった。
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