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ジーワジーワジーワジーワジジジジジ……。
今日も快晴。蝉もウザイくらいに元気だ。
「おはよう」
「おはようございます」
「あれ、どした?」
今日は藤枝が髪を後ろで一つに纏めていた。頬から首に掛けてのラインがすっきりとしていて涼しげだ。
藤枝は微妙な表情で首に両手を添える。
「……似合いませんか?」
「いやいやっ! そんなことは言ってねぇよ。珍しいから」
(気をつけろ、俺。こんな何気ない一言もセクハラになり得るんだからな)
いわれのないセクハラで辞めていった同僚を思い出しつつ、慌てて否定する。それからへらりとぎこちない笑顔を作って言った。
「夏っぽくて良いと思うぜ」
藤枝はさらになんとも言えない表情になって、片手を首の後ろに回した。そして自分の髪を握りしめて言う。
「良いですか?」
「ああ。涼しそうだもん」
「……ありがとうござい……ます」
藤枝は小さく礼を言うとくるりと正面を向いた。髪の毛束が首の後ろでぴょこんと跳ねる。
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