月夜の手相占い

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 俺は椅子に座りながら続けた。 「大体俺はさ、ショートの方が……」 「はい?」 「………」  ――私、結婚するのよ。  ――あなたと違って私をきちんと見てくれる人。  短い髪から彼女のことを連想してしまった。この間のメールの文章が俺の脳内で繰り返し再生される。貰ったのはメールだというのに、ご丁寧に彼女の声で、だ。 「小山内さん?」  藤枝が首を傾げる。俺は両手を顔の前で振った。 「あ、いや。なんでも……」 「あ!!」  藤枝が急に俺の左手首を掴んだ。そのまま自分の方に引っ張るもんだから、自分の左手が身体の前を通り、ぞうきんのように身体が絞られる。 「な! なんだよ?」  藤枝は真ん丸な瞳で俺の顔を見た。そしてぱくりと口を開けて言う。 「指輪! 指輪してましたよね? どうしたんですか?」 (こんなちっちぇとこ、良く気付くよな。流石女っていうか)  俺は手を取られたまま「えっと……」と言い淀んだ。
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