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「手相占いでもしてるんですか?」
「三谷さん!」
「僕も仲間に入れて欲しいな」
俺たちは揃って、色黒の顔を見上げた。
(また、ウゼぇ奴が……)
三谷は昨日と同じ場所に立ち「おはようございます」と白い歯を見せてきた。今日は薄いピンクのワイシャツを着ている。
「おはようございます」
「おはよう」
藤枝は仕事モード(?)でキリリと三谷を睨み付ける。俺は辛うじてため息を吐かずに済ませた。
「髪、纏めてるんだね。下ろしてる方が良いのに」
「……今日はなんの用ですか? 三谷さん」
三谷は前髪を払って藤枝に笑顔を作る。
「今日こそはどうかなって思って。週末だし」
(こいつも懲りねぇな)
俺は左腕を取られたまま、二人の成り行きを見守った。藤枝は昨日みたいな事務的な口調で「ごめんなさい」と謝った。
「今日は予定があるんです」
「予定? そうなの? 嘘吐いたりしてない?」
俺は思わず咽せてしまった。昨日の残業だって嘘なんだぜ。同じ男としてちょっと同情
してしまう。
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