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藤枝は山口を一瞥して、俺の方に顔を向けた。
「あの人は誰にだってアプローチしてるんですから。ねぇ、小山内さん?」
「俺に振るなよ。三谷のことなんて知らねぇよ」
「飯野さんとか柳葉ちゃんとか。ほんっとーにサイテー」
藤枝がくしゃりと箸袋を丸めると、山口が「マジで? 俺らのアイドル、柳葉ちゃんま
で?」と身を乗り出してくる。藤枝はべぇと舌を出した。
「山口くんもサイテー」
半眼になる藤枝に山口が慌てて取り繕う。
「いやいやいや! 藤枝は三課のアイドルだって」
「別にアイドルなんて目指してませんからー。でも山口くんと五十嵐さんの見積は後回しにすることにしますー」
「ええー! 藤枝ちゃーん」
「うわ、俺、もらい事故」
わざとらしくそっぽを向く藤枝に、彼女を拝む山口と額を抑え天井を仰ぐ五十嵐。子供みたいなじゃれ合いに口元が緩んだ。
(失恋かどうかは分からねぇが、元気みてぇだな)
俺は半分くらい残っていたグラスを一気に空け、ドンとテーブルに置いた。
「よし。じゃあ今日はパーッと呑むぞ」
残りの三人から「はーい」と良い返事が上がった。
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