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二軒目に行くという山口、五十嵐と別れて、藤枝と二人で帰ることになった。二人に誘われ俺も呑めない訳ではなかったが、同年代だけの方が話しやすいだろうと遠慮したのだ。
(女子もいるしな……って俺すっかり保護者ポジションじゃねぇか)
はぁと嘆息しつつ隣に視線をやれば、藤枝はそんなに呑んでいなかったのかしっかりとした表情で立っていた。カーディガンを着ていない白い腕が夜の闇に浮かぶ。蝉の声こそしないが、夜はまだまだ暑かった。
俺は片足に体重を掛け、鞄を持ったまま両手を組む。
「藤枝。お前家どの辺? 近くなら送るけど? それともタクシー捕まえるか?」
藤枝はハッとして俺を振り返った。
「大丈夫です。近くなんで。歩けますから」
「お前、三課のアイドルだろ? ははは。送るって。家まではいかねぇからさ」
軽口を叩きニッと口端を持ち上げたが、藤枝は唇をへの字に曲げた。
(やべ。怒らせたか?)
「じゃあ、タク……っ!?」
藤枝に手首を捕まれていた。
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