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「藤……っ?」
そしてそのまま強く腕を引かれた。いつぞやの朝を思い出す。今回は正面だからぞうきんみたいな捻りは入らなかったが。
藤枝は俺の左手を胸元に引き寄せ、無言のまま上目遣いで見上げてきた。
「…………」
「…………」
(うわ、ここまできてセクハラの流れか? 勘弁してくれよ)
俺はゴクリと唾を飲み込んで藤枝の言葉を待った。藤枝は下唇を噛んで俺の手を顔の前まで持ち上げる。
(手相みてくれんのか、なんて言ったら火に油か?)
自分の手の先にある藤枝の顔。眉間にしわが寄っていた。
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