月夜の手相占い

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「私、…………になんかならなくていいんです」  藤枝が漸く何かを呟いた。 「え?」 「三課のアイドルになんかならなくていいんです」 「……悪りぃ。冗談だよ」 (思った以上に怒らせてた? それとも酔ってんのか?)  ここは素直に謝ることにする。しかし、藤枝は首を横に振った。その度に細い首の後ろも髪の束がちらついた。 「私がなりたいのは別の……」 「…………」  藤枝は俺の手に視線を戻した。そして手首を掴んでいた手をゆっくりと手の平側へ動かし、ごつごつとした骨を撫で指の根元で止める。 (そ……こは)  藤枝はきゅっと俺の指を握った。
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