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目の覚めるような鮮やかな赤──
重ね合わせた二人の唇が花びらを散らしたように鮮明に彩られていく。
息も絶え絶えで苦しい筈なのに、余りにも激しく熱いグレイのキスにルナは頬を上気させていた。
「……っ…ルナ」
名前を口にしたグレイの声の方が苦し気で、ルナは切なく瞳を歪める。
この苦しみを共にしてくれているように感じてルナは細い涙の筋を目尻から流した。
合わさる唇の中で舌が絡み、注がれた血の味が唾液を含みなめらかになっていく。
苦しいのにもっと欲しい。
なぜかそう切実に欲してしまう──
ルナはそんな素直な想いのままに、グレイの後頭部にそっと手を回した。
「──……」
一瞬だけビクリとグレイの瞳が見開く。
求めながら頭に回されたルナの手の感触がじわりと心地よく伝わると、グレイは思わずその嬉しさに眉を寄せて切なく瞳を細めた。
「……っ…」
言葉もなく感情を露にグレイはルナを掻き抱いた。
切ない──
こんなにも切なくて
そして軋む胸を甘く締め付ける。
苦しいのにずっと味わっていたい。
そんな矛盾にグレイ自身も戸惑いながら、それでも腕の中のルナを必死に掻き抱き続け唇を重ねた。
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