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ニ夜目
左近大夫藤原吉臣には、さまざまな噂がある。
祖父の晴明と同じく、母親は狐であるとか、吉昌の子ではなく、晴明の子であるとか。
妻はあやかしものだったとか。
荒唐無稽な物ばかりであるが、吉臣はそれをあえて否定しようとはしない。
ただ微笑んで、何も言わない。
それが逆に恐く、直接聞ける勇気のある者は、誰もいない。
吉臣としてはただ、否定するのも面倒なだけなのだ。
言わせたい者には言わせておけばいい。
それが、吉臣の考えである。
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