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「それでどうしますか、成親様」
為末に少し下がって貰い、吉臣と成親は向かい合って座った。
「今は兄と弟だぞ」
呼び方が戻っている事を指摘された吉臣は、口元を袖で隠して苦笑した。
耳敏いな、と思ったのである。
「そうでしたね。兄上には、何か策がおありで?」
「人形を使うのが一番だろう」
吉臣に頷きながらそう言って、成親は懐から人の形に切った人形を取りだすと、そこに藤原為末、と書き記した。
そして、先ほど頂戴した為末の髪をくくりつけ、よし、と頷くと、吉臣に顔を向ける。
「ただし、これは足止め程度だと、お前も分かっているだろう。退魔の符は持っているな」
「はい。持っていますよ」
「俺は足止め。退治するのはお前だからな」
「分かりました。お任せください」
吉臣が微笑しながら頷くと、成親も頷き、鬼が現れるまで、他愛もない会話をしていた。
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