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「これで、少しは懲りるのではないでしょうか」
「他の方の元へ通うのは、まぁ仕方の無い事かもしれませんが、お母様の泣く顔を、見たくなくて」
すべては、姫が望んだ事。
吉臣はそれに少し、手を貸したに過ぎない。
「姫は優しいお方です。依頼された時は、どうしようかと思いましたが。その思いが可愛らしく、断れませんでした」
「…可愛らしいといえば、小鬼たちは可愛い子達でしたわ」
あの簀子を駆け回っていた小鬼たちはすべて、吉臣の式神であったのだ。
「そうですか。ですが、お気をつけください。あやかしものに、魅入られないよう」
「ええ。分かっていますわ」
「それでは、私はこれにて」
御簾越しに姫に微笑むと、吉臣は軽い動作で立ち上がった。
姫は何も言わずに、黙って歩き去るその背を見送ると、ため息を一つ溢して、帳台へ入る。
そして、身を横たえ、吉臣の微笑みを思い浮かべながら、静かに目を閉じた。
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