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「そういう事か」
呟いた成親に、吉臣は苦笑を向ける。
帰りの牛車の車中で、事のあらましを語り終えた所だった。
「すみません、兄上」
そう謝る吉臣の隣には、小鬼がちょこんと座っている。
成親がそれを見つめると、小鬼は不思議そうに首を傾げた。
成親はため息を吐き、憮然とした顔を吉臣に向ける。
「何に対しての謝罪だ。鬼をけしかけた事か。姫に依頼された事か。それとも、屋敷のあやかしものはすべて、お前の式神だったという事か」
「…申し訳ありません。全部です」
「まぁいい。俺も気がつかなかったんだから。…さすがだな」
成親は不機嫌そうな表情を消して、からりと笑って吉臣を誉める。
それに対して吉臣はただ微笑み、牛車の揺れに身を任せ、目を閉じた。
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