ニ夜目

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しばらくの静寂の後、吉臣は茵から起き上がった。 その顔にはもう、いつもの微笑みが浮かんでいる。 心の奥底に、思いをすべて押し込めるように。 「弱音ばかり吐いていたら、それこそお祖父様に怒られるだろうね」 「…姉上にも怒られましょう」 宗定が言うと、吉臣は少し目を丸くしてから、微笑んだ。 陰陽寮を出てから、自分を責めてばかりで、何も手につかなかった吉臣を、綾子は何とかしようと必死だった。 そのお陰で、吉臣は立ち直った。 「そうだね…」 それでも、あれ以来、感情を隠す事が上手くなってしまった吉臣が、表面上は取り繕っているだけなのだと、綾子も理解していたけれど。 「彼女に怒られないように、そろそろ支度しないと。遅れてしまう」 そう言いながら吉臣が立ち上がると、宗定はいつものように、着替えを手伝い始めた。
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