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「こんにちは、吉臣様」
礼儀正しく挨拶した子供に、吉臣は微笑みを浮かべる。
吉臣がその頭を撫でると、照れたように笑って、父親の元へ戻った。
「よく来てくれたな、吉臣殿」
そう言ったのは政孝で、吉臣が訪れているのは、政孝の屋敷である。
昨日の相談を受け、出仕後にやって来たものだ。
「康孝。少し吉臣殿と話すから、庭で遊んでいなさい」
息子に言い聞かせながら、政孝は控えていた女房に目配せをする。
心得た女房が頷いて康孝を促すが、康孝は不満そうに唇を尖らせた。
「私も吉臣様とお話がしたいです」
「大事な話があるから、お前は後でな」
「でも…」
それが終わったら、吉臣は帰ってしまうと思ったのだろう。
康孝は助けを求めるように、吉臣に視線を向けた。
それを受けた吉臣は、康孝を安心させるように微笑む。
「お父上との話が終われば、いくらでも話をして差し上げますよ」
その言葉で安心したのか、康孝は素直に頷くと、部屋を出ていった。
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