ニ夜目

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それを見送った政孝が、苦笑を浮かべて吉臣を見る。 「吉臣殿には、女性だけではなく、子供も素直なのだな」 「それはどういう意味でしょう」 「他意はない。率直な感想だ。それで、康孝はどうだろうか」 政孝に言われて、吉臣は庭で蹴鞠をしている康孝に顔を向けた。 特に変わりはない、普通の童子だ。 あやかしが憑いている気配は、何処にもない。 吉臣は部屋の中にも顔を巡らせたが、異様な気配を感じる事は無かった。 「…昨晩も、同じ事があったのですよね」 式から報告も受けていたが、吉臣は念の為そう尋ねる。 ああ、と政孝が頷くと、吉臣は少し沈黙した。 口元に白い指を当て、何やら思案する。 目を伏せ、物思いに更ける姿に、傍らに控えていた女房が頬を赤らめながら、小さく息を吐く。 政孝が咳払いをすると、恥じらうように袖で顔を隠した。 「なにか分かったか?」 顔を上げた吉臣に、政孝は僅かに身を乗り出しながら問いかける。 吉臣は微笑しながら、首を振った。 「今のところは何も。康孝殿と二人にしてもらっても、よろしいですか?」 「私は居ない方がいいのか?」 「少し、聞きたい事があります。父親がいたら、話さない事もあるやもしれませんので」 「む。確かにそうか」 政孝は頷くと、康孝を呼ぶために立ち上がる。 そして、女房たちとともに、康孝と入れ違いになる形で、部屋を後にした。
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