三夜目

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「成親様、吉成様でしたか」 ため息を吐きながら言った吉臣に、吉成が微笑を向ける。 他人行儀に呼びかけられた事には頓着せず、ゆったりと口を開いた。 「もしかして、良いところを邪魔してしまったかな?」 「いいえ」 「率直にいうが、今宵の相手は鬼か」 「かつては人でした」 成親からの問いに、吉臣はそう言って微笑んだ。 吉臣の返答に、成親がため息を吐く。 「今は鬼だろう。陰陽寮へ連絡があった。この屋敷に、鬼が住んでいると」 「はい。ですが、あなた方に祓われるわけにはいかないのです」 「なるほど。お前が鬼を匿っていたのか」 「ご想像にお任せいたします」 鬼を匿っていたのは自分では無いと、吉臣はあえて否定をしない。 その必要も無いと、思ったからだ。 「吉臣…。魔に魅入られたか」 「そう思いたければ、ご自由にどうぞ」 「吉臣…」 微笑む吉臣に、成親は厳しい視線を向け、吉成は困った顔で見つめる。 「彼女を祓うと言うのなら、私は止めねばなりませぬ。どういたしますか?」 懐に手を入れながら、吉臣が問いかけた。 成親と吉成は、緊張した面持ちで顔を見合わせる。 と。 「お待ち下さい」 凛とした声と共に、藤の君が姿を現した。
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