三夜目

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「…藤の君」 困った顔で微笑む吉臣に、藤の君も微笑む。 「申し訳ありません、吉臣様。されど、わたくしのせいで、誤解されるわけには…」 「貴女に手を貸した時点で、私はもう決めておりました」 「やはり、あなたに頼んで正解でした。出来れば、もっと早くに、お会いしとうござりましたが…」 はっきりと言った吉臣に微笑んで、藤の君は成親と吉成に顔を向けた。 「…わたくしは、吉臣様以外の方に、祓われとうはござりませぬ」 その言葉に、成親と吉成が怪訝そうな顔をする。 最初に問いかけたのは、成親だ。 「どういう事だ?」 「吉臣は、自分で祓うために、匿っていたという事かい?」 「いいえ。彼女の願いを叶えるためです」 「願い?」 「それは後程。私の邪魔をしないと約束いただけるのであれば、お話ししましょう」 「…約束しよう」 成親が言い、吉成も頷く。 すると、吉臣は微笑みながら、頭を下げた。 「ありがとうございます」 が、顔をあげた吉臣の手には、符が握られていた。 「では、そこで動かないで下さい」 放たれた符は、成親と吉成の足下に落ちる。 二人は驚いた顔をするが、声を出せず、動く事も出来ない。 吉臣はそれに微笑み目礼すると、藤の君を誘い、屋敷の中へ戻った。
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