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「…藤の君」
困った顔で微笑む吉臣に、藤の君も微笑む。
「申し訳ありません、吉臣様。されど、わたくしのせいで、誤解されるわけには…」
「貴女に手を貸した時点で、私はもう決めておりました」
「やはり、あなたに頼んで正解でした。出来れば、もっと早くに、お会いしとうござりましたが…」
はっきりと言った吉臣に微笑んで、藤の君は成親と吉成に顔を向けた。
「…わたくしは、吉臣様以外の方に、祓われとうはござりませぬ」
その言葉に、成親と吉成が怪訝そうな顔をする。
最初に問いかけたのは、成親だ。
「どういう事だ?」
「吉臣は、自分で祓うために、匿っていたという事かい?」
「いいえ。彼女の願いを叶えるためです」
「願い?」
「それは後程。私の邪魔をしないと約束いただけるのであれば、お話ししましょう」
「…約束しよう」
成親が言い、吉成も頷く。
すると、吉臣は微笑みながら、頭を下げた。
「ありがとうございます」
が、顔をあげた吉臣の手には、符が握られていた。
「では、そこで動かないで下さい」
放たれた符は、成親と吉成の足下に落ちる。
二人は驚いた顔をするが、声を出せず、動く事も出来ない。
吉臣はそれに微笑み目礼すると、藤の君を誘い、屋敷の中へ戻った。
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