三夜目

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「…終わりました」 吉臣は外に出ると、成親と吉成にそう告げながら、先程地面に放った符を拾った。 そうすると、成親と吉成はようやく動けるようになって、ほっと息を吐く。 「俺たちに金縛りをかけるとは…」 「いい度胸だと、誉めた方がいいのかな」 二人は、吉臣をからかうように言う。 けれど吉臣は二人の言葉には答えず、そのまま足を進めた。 その後を、成親と吉成が追いかけて行く。 「おいおい。反応してくれないと寂しいだろう」 「今の私には、そんな気力もありません」 常の微笑みもなく、疲れたように吉臣が言うと、吉成は何かを察してか、話題を変える。 「成親殿。叔父上には何と報告しましょうか」 「吉臣が祓ったと言うのは…」 「駄目でしょうね、もちろん」 「…鬼はもういないと、そう言っておいて下さい」 二人の会話に振り向く事もなく、吉臣は歩きながら答えた。 寂しげな声音に、一体何があったのだろうと、吉成が成親に心配そうな視線を向ける。 成親は首を振りながら、肩をすくめた。 そして、少し前を歩く吉臣に視線を向ける。 「吉臣は、優しいからな」 「…そうですね。昔から、優しい子です」 祓うという約束を交わした鬼にも、優しい気持ちを絶やさなかったのだろうと、二人には分かっている。 吉臣以外に祓われたくないと、彼女がそう言ったのだから。 「そこは変わってほしくはないが、優しすぎる気がしなくもない」 「そうですね」 成親の言葉に苦笑し、吉成も吉臣へ視線を向ける。 二人は吉臣の事を心配しながら、その背を見つめていた。
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