第一章「運のない彼と雨が似合う彼女」

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 一方、女たちのほうはかなり若い。大人びた服装こそしてはいるが恐らく中学生? いいや、高校生といったところだろう……援助交際。  今時はさして珍しくもない光景だ。だが2人の女のうち、一方には見覚えがあった。伏し目がちに俯く整った顔立ち。彼女はクラスメイトの三島小夜だった。    恵まれた容姿と、誰とでもすぐ打ち解ける人当たりの良い性格は、生徒たちは勿論のこと教師連中からの信頼も厚い。要するに才色兼備を地でいく優等生、ということだ。    如月は目を合せずに、小夜の隣を通り過ぎてゆく。そして暫く歩いたところで、ゆっくりと振り返った。すると彼女はこちらを見つめながら、ぼんやりと佇んでいた。丁度その時だった、鉛色の雲から静かに雨が降り注いできた。    雨に打たれながら、こちらを無表情で見つめてくる三島小夜――その光景は一枚の絵画のようで、とても蠱惑(こわく)的だった。  やっぱり僕は運がないらしい……。如月は心の中でそう呟くと、持っていた傘を開き小走りで大和駅へと向かった。
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