第十七章「迷惑な死にたがり」

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「今回は被疑者逮捕にご協力、誠に感謝いたします」  そういって長倉は深々と頭を下げた。そんな彼女を見て如月は珍しく口角を上げた。 「全然似合ってませんよ」 「ええ、知ってるわ」  長倉はシニカルに微笑んだ。そんな彼女を暫く見つめた後、如月は静かに口を開いた。 「赤バッジ、どうして付けないんですか?」 「あのねえ、こんなもん付けてたら男が寄ってこないでしょ」長倉は眉間にしわを寄せながら、ジャケットのポケットからバッジを取り出した。そして自嘲した笑みを浮かべると「まあ……バッジだけが原因じゃないだろうけどね」と、続けた。  変わった女刑事だ……。如月はそう思いつつ、小夜に視線を移した。すると彼女は相変わらず悲痛な表情で俯いていた。  他人がどうなろうが、関係ないと思って生きてきた。なのに何故かあの時は、心が少しゆれた。  ねえ、**ちゃん……一体、僕はどうしちゃったんだろう? 如月は心の中で尋ねると、静かに警視庁の応接室をあとにした。
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