第十八章「それぞれの想い」

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「ねえ、お兄ちゃん」  駅へと向かう道中、先程から黙りこくっていた有紀が突然、如月のシャツの裾をつかんだ。 「キミのお兄ちゃんは、そこにいるボーズ頭だろ?」  如月は怠そうに前方を歩く、清水を顎でさした。すると有紀はにやけ顔を浮かべながら、首を横に振ってみせた。 「ううん。あれは信ちゃんだよ」 「信ちゃん? まあどっちにせよ、そのお兄ちゃんってのは勘弁してくれ」 「お兄ちゃんはさあ――」 「だから、そのお兄ちゃんっていうのは……いいや、もういい」  如月はいくらいい聞かせても無駄だと判断し、早々に諦めることにした。 「ねえ、お兄ちゃんは怖くないの?」 「怖いって何が?」 「さっきみたいなこと」 「怖いよ。怖くて足が震えてたの見えてただろ?」 「嘘だあ、超余裕かましてたじゃん」 「あいにく表情に出ない性質(たち)でね」 「ねえ、どうして怖くないの?」 「しつこいなあ……」 「ねえ、教えてよ。お兄ちゃん」 「さあね。昔にもっと怖い目に遇ってるからじゃないのか」  如月が吐き捨てるように呟くと、有紀はパッと瞳を輝かせた。
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