第十八章「それぞれの想い」

8/8
770人が本棚に入れています
本棚に追加
/535ページ
「それなら、たまには ”美味しかったよ” とか、 ”いつもありがとう” くらいいってあげなさいよ」 「あのてのタイプは、甘やかすとろくなことにならないからね」 「如月は釣った魚にはエサをやらないタイプだ」 「釣ったんじゃなくて、勝手に魚籠(びく)の中に入ってきたんだよ」 「はははっ、確かにそうだね」  自嘲した表情を浮かべる如月を見て、早苗は屈託なく笑った。その後、二人は他愛もない会話を交わしながら、ゆっくりと駅へと歩みを進めた。  そんな中、如月はふと空に視線を移した。すると先程まで晴天だった空はいつの間にか、綺麗な夕焼けに覆われていた。  どうして自分があんな行動に出たのか? いくら考えてもその答えは出せなかった。恐らく今の僕には正解をみつけることは出来ないのだろう……。如月はその綺麗な夕焼け空を眺めながら、心の中のもどかしい想いにそっとふたをした。
/535ページ

最初のコメントを投稿しよう!