第十九章「昼間のカラオケと不安定な彼女」

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 翌日、小夜は普段より少し早く教室へと向かった。するとそこには、如月がいつものように一人きりで文庫本に目を落す姿があった。 「おはよう」  小夜が普段通り声をかけると、如月は文庫本に目を落としたまま無愛想に応えた。  どうやら日曜日のことは怒っていないようだ……。彼女はほっと胸を撫で下ろした。 「あ、あのさあ……一昨日は助けてくれてありがとう」 「ああいうことは、もう二度とごめんだよ」 「うん、ごめん……」  小夜は頷きながら如月の向かいに腰を下ろした。そして彼が読んでいる本に目を向ける。それは聞いたこともないタイトルの小説だったが、作者名から海外の物だということが分かった。 「今日は随分と静かだな」  小夜がぼんやりと小説の表紙を眺めていると、如月が静かに口を開いた。 「そ、そうかな」 「一昨日の件がまだ尾を引いてるのかい?」 「ううん、そういう訳じゃないけど……」 「そうか、ならいいけど」  如月は納得すると、いつものように文庫本に視線を戻した。すると二人きりの教室に沈黙が訪れた。  分っていたことだけど、やっぱり今までとはちょっと違う。意識し過ぎて会話が続かない……。  小夜は心の中で溜め息を漏らした。そして以前として続く沈黙に間が持たなくなった彼女は、スマートフォンで適当なサイトを開いた。たまたま開いたページは、今日の運勢カウントダウンと題されたベタなサイトだった。
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