第二十章「ひじきの思い出」

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 1時限目の授業は数学Ⅰ。教科担任の河合は教科書に目を落としながら、二次関数の問題を説明している。相変わらずの滑舌の悪さに生徒たちは辟易としていた。    そんな中、小夜がぼんやりとその説明を聞いていると、スマートフォンにLINEのメッセージが届いてきた。相手は小夜の予想通り早苗だった。廊下側の席に目を向けると、彼女は小さく手を振っている。  メッセージを開くと【あいつ、なにやってんだろう?】と書かれていた。小夜が窓際の席に顔を向けると、如月は教師からは見えない角度で、スマートフォンを弄っていた。  忙しなく指を動かしているところを見ると、どうやら誰かと連絡を取り合ってるようだ。  連絡を取り合うような親しい人がいたんだ……。小夜は正直なところ意外だった。何故なら彼と過ごしてきたこの数週間、そんな人間は誰一人としていなかったからだ。    女かな?……いやいや、それはないでしょ。じゃあ、私ら以外の友達? ううん、それも考えにくい。如月を眺めながらそんなことに考えを巡らせてると、自分とは別にもう一人、彼に視線を向けている生徒がいることに気付いた。
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