第二十章「ひじきの思い出」

3/13
前へ
/535ページ
次へ
 沢木詩織――学級院長でありクラスでも大人しく真面目な印象の詩織。そんな彼女が授業中にも関わらず、教師にではなく如月に視線を向けている。  そんな詩織の様子を見て、小夜の頭の中に小さな可能性が浮かんだ。1時限目が終了し、2時限、3時限……そして4時限目の授業中も、詩織の視線の先には如月の姿があった。 「授業そっちのけで、一体誰と連絡取り合ってたわけ?」  昼休みの教室ではいつもの面子で昼食を摂る3人の姿があった。そんな中、小夜は弁当の蓋を開けながら如月に顔を向けた。 「ただの知り合いだよ」如月はそういってミートボールを口に運んだ。そしていつもの無表情で「そんなことより、そっちこそ授業に集中しなよ。ずーっと見てただろ? 僕のこと」と、続けた。  もっ、もろバレしてた……。途端に小夜の顔が紅潮してゆく。 「……顔、赤っ!」  早苗は購買部のパンを開けながら、小夜の顔を覗き込んだ。 「うっさいっ」 「あははは、ちょっと見てよ、如月っ! この小夜の可愛過ぎる顔。真っ赤よ、真っ赤っ! あはははっ」  早苗の悪ふざけをよそに、如月は我関せずで昼食を続けていた。その後、程なくして小夜の顔色も落ち着いたころで、彼は箸を止めるとおもむろに口を開いた。
/535ページ

最初のコメントを投稿しよう!

787人が本棚に入れています
本棚に追加