第二十章「ひじきの思い出」

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 二階堂駅前の宝玉堂書店は、オープンしてから数日が経っている為か、大混雑している訳でもなく程よい客入りだった。そんな中、如月は入店すると同時に、小夜たちを無視して書籍の物色を始めた。 「ねえ、私たちはこの辺にいるからねっ! 迷子になったり、絶対に一人で勝手に帰ったりしないでよ」  小夜は座読スペースに腰を下ろすと、専門書関連の場所に足を向ける如月に声をかけた。 「……まるで我が子を心配するオカンね」 「ほっといてよ」  小夜は心配そうに如月の背中を見つめながら呟いた。そして「それより無理につき合わせてゴメンね」と、いいながら詩織に顔を向けた。 「ううん」詩織は伏し目がちに首を横に振った。「私のほうこそごめんなさい……本当は如月君と二人きりで来るはずだったんでしょ?」 「うん。まあ、そうなんだけど。でもいいのよ、二人きりで来たところで、どうせあのざまだし……」  小夜は遠くで分厚い本に目を落としている如月を見つめると、呆れるように溜め息交じりで肩を落とした。
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