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「クラスメイトの如月君」
「っで、お前ら何やってんの?」
「お弁当食べてる」
「それは見りゃ分んだよ。俺が聞いてんのは、どうして他の男と机を向かい合わせにして、楽しそうに飯食ってんだ? ってことだよっ!」
鈴木の怒号が教室に響き渡った。だが小夜はそんなことはお構いなしとばかりに、いつもの微笑みを浮かべながらこう続けた。
「誰とお昼しようが私の自由でしょ」
「俺ら付き合ってんだろ? だったら――」
「えっ、そうなの? 私はそんなつもり全くなかったけど」
小夜は当たり前のようにいってのけた。すると見る見るうちに鈴木の顔が紅潮してゆく。だが彼女はそんなことは気にも留めずに、淡々と食事を続けた。
いたたまれなくなった鈴木は ”勝手にしろっ!” と、捨て台詞を吐くと、逃げるようにその場をあとにした。そして静まり返る教室――そんな中、小夜が静かに口を開いた。
「ほら、これで厄介ごとはなくなったよ。だからそんな怖い顔してないで、楽しくご飯食べようよ」
「怖い顔? 悪いけど、もとからこういう顔なんだ」
「こりゃ、失敬」
「それより良いのかい? さっきの人」
「いいの、いいの。正直、もう飽きちゃったし。だから今は如月君に夢中よ」
小夜はそう囁くと、悪戯っぽく片目を瞑った。
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