788人が本棚に入れています
本棚に追加
午後6時。二人が忽然と姿を消してから、5時間余りが経過していた。引き続き警察の捜索は続いていたが、有力な目撃証言などは得られず、時間だけが悪戯に過ぎていった。
仕事場から戻ってきた優作は、リビングで文子に肩を抱かれながら、すすり泣く美雨に「大丈夫だ、必ず見つかる」と、声をかけた。だがそれは先程から何度も浜崎たちが彼女にいい聞かせていた、なんの根拠もない言葉だった。
双子たちの失踪から何一つ手掛かりも得られないまま、静かに夜は明けた。誘拐の可能性も出てきたため、恩田家のリビングには警察関係者が数人訪れていた。
食事も喉を通らずやつれた様子の美雨。そんな彼女の手を文子は夜通し握っていた。そんな中、浜崎や町内の人間たちはいても経ってもいられず、明け方まで足を棒にして二人の行方を探した。
翌日、時刻は正午0時を回った頃だった、文子と共に美雨を気遣っていた若手の女性捜査員の携帯電話が鳴った。彼女は着信相手を確認すると、上司の井上に目配せをしてリビングから出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!