第四章「群青色のビー玉と彼女の涙」

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「絶対、あいつらの仕業だよ」   「やっぱそうかな……」    小夜は来客用のスリッパをバタつかせながら、悲痛な表情を浮べた。    場所は放課後の1年D組の教室。そこにはいつもの面々が顔を突き合わせていた。昨日の女子生徒たちとの一件。菅原に連れられ生徒指導室へと向かった彼女たちは、反省でもしたのかその後は小夜に手出ししてくることはなかった。    だが今朝になって小夜が登校すると、彼女の上履きが綺麗さっぱりと無くなっていた。加えて学園のWEB掲示板には、小夜に対する誹謗中傷が数多く書き込まれている。 「どうしよう、如月君……私、怖い」  小夜は悲痛な表情を浮かべた。だがそんな彼女をよそに、如月は先ほどから窓の外を眺めながら、スマートフォンで音楽を聞いていた。曲目は相変わらずのラジオ体操第一である。 「人が壮絶なイジメに遭ってるっていうのに、何を呑気に音楽なんか聞いてんのよっ!」  小夜はいつぞやと同じように、如月の耳から強引にイヤホンをもぎ取った。 「自業自得だろ?」 「ちょっとくらい心配してくれてもいいじゃんっ!」 「困ったことになったね、心から同情するよ」  如月は無表情のまま小夜を見つめた。そしておもむろにイヤホンを耳元へとはこんでゆく。 「いやいや、そういうことじゃなくて」  今度は早苗が、如月のスマートフォンを強引にひったくる。すると彼は大げさに溜め息を漏らすと、心底うんざりした表情を浮かべた。
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