第二十八章「息もできない」

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 何か捜査に進展があったのだろうか、美雨は泣き腫らした目を刑事たちに向けた。程なくして女性捜査員がリビングに戻ってきた。その表情は険しく、とても良い知らせだとは思えなかった。女性捜査員からの報告を受けると、井上は優作に視線を合せた。 「恩田さん、先程ご子息を連れ去った犯人が自首してきました。現在、常磐署にて取り調べ中とのことです」 「息子たちは?」  優作は悲痛な表情で井上に尋ねた。 「ハル(・・)君は命に別状はないようです。現在、神楽病院にて処置中とのことです……」 「ナツは? ねえ、刑事さんナツはっ!」  美雨は俯く井上の胸倉に掴みかかった。すると彼は顔を歪ませながら「残念ですが……」と、言葉を詰まらせた。  優作はそんな刑事を呆然と見つめた。浜崎は額に両手をあて、声なき叫び声をあげる。そして美雨は、まるでマリオネットの操り糸が切れたように膝から崩れ落ちた。その表情は抜け殻のように、どこまでも空洞だった。
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