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大きな魚
酔っ払った父がクーラーバックとともに帰ってきた。
なんでも、偶然電車で隣だった人が、大きな魚を釣ったものの捌けないから困っている、もらってくれないかと云われ、もらってきたのだという。
「大きな魚って、なに?」
聞いてみたものの、父はすでに高いびき。
ああなってしまっては、ミサイルが落ちても気付かない。
はぁっ、もらってきたって、クーラーバックを返さなきゃいけないのにどうするんだろ。
小さくため息をつきつつ蓋を開けた途端。
「んぎゃぁぁぁぁあああああ」
真っ黒いなにかが夜の空気を震わせて大きな声で鳴いた。
慌てて、蓋を勢いよく閉める。
「なんだ~?」
珍しく父が一瞬目を覚ましたが、すでに静かになっていたからか気のせいだと思ったのか、すぐにまた眠ってしまった。
ばくばくと早い心臓の音。
声に驚いてよくは見なかったが、確かに魚ではなかった。
クーラーボックスの弁償を云われたら知らぬ存ぜぬで通すことに決め、ガムテープでぐるぐる巻きにしてゴミに出した。
父は一体、なにをもらってきたんだろうか。
【終】
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