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第5夏 2人の両親の夏児(かこ)
僕と零華は過去や未来を知ることができるタイムマジックを使うか、使わないかで悩んでいた。
零蔭「僕はもう、覚悟はできた。どんなに辛くても受け入れる…」
零華「私も覚悟はできた。どんなに辛くても、どんな副作用でも絶対に前を向く!」
そしてタイムマジックを使用した。
僕と零華の前に13年ほど前の場面が映り、2人の夫婦と1人の子供が現れた。
妻「警察に指名手配されて、もう1ヶ月。これから、ずっと逃げ続けるとこの子に辛い思いをさせてしまうし、私たちにも負担が大きいわ…」
夫「養子である零華を児童養護施設から、引き取っただけなのに、指名手配されるなんて…」
妻「零華が誘拐された子供だと知らなかっただけなのに…、引き取って育ててるだけなのに…」
現代の零華の目から、自然と涙が溢れていた。
捨てたのは肉親ではなく、義理の両親だったのだ。
誘拐犯と間違われ、指名手配犯になっていた。
夫「苦渋の決断だが、仕方がない。私達が誘拐犯を演じて、警察に大人しく捕まろう。零華は警察に見つかると自由を奪われると思うから、警察に見つからなそうな森に置いていこう…」
妻「零華、ごめん。こんな私達が引き取ったことと、森に置き去りにすることを許しておくれ…」
この言葉を最後に零華は置き去りにされ、両親は捕まった。
現代の零華は号泣しており、僕は慰めることしかできなかった。
次に僕の過去を見ることになった。
13年ほど前の場面だった。
何故かわからないが、零華の義理の両親が映った。
妻「零蔭、私の作ったご飯美味しい?」
過去の零蔭「うん!美味しい!」
夫「零蔭、大きくなれよ~!零蔭はパパの自慢の息子だからな!」
妻「零蔭、養子を引き取ってくるから大人しく留守番しててね」
夫「可愛い子を連れてくるから、楽しみにしてろよ~」
そう、零華の義理の両親と零蔭の両親は同一人物だったのである。
養子を引き取ってくるということで、外に出たまま、帰ってこなかったのである。
零蔭と零華の涙声が、夏の夜に響き渡った。
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