Case3 赤毛山の徳川埋蔵金

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「――やあ、おはよう……というか、その格好は……」  そんなわけで翌日の日曜、俺達は市郊外にそびえる赤毛山を訪れることとなり、そこへと向かうバスの停留所に朝っぱらから集合することとなったのだが……。 「え? なんか変かな?」 「いや、変というかなんというか……」  現れた乙波は、とてもハイキングに行くとは思えない格好をしていた。  古き良き20世紀初頭の秘境探検隊を思わすような白の半袖シャツと短パン、ヘルメット型の帽子に、トレッキングシューズはまあいいとしても、背中にはなぜかショベルとつるはしの突き刺さった大きなリュックサックを背負っている。  い、一体、何をしに行くつもりなんだ……。  昨日〝ハイキング〟とは言っていたが、俺とて学習能力がないわけではない。おそらくはただのハイキングには終わらず、またしてもトンデモ系がらみのものになるのは必至と考え、家に帰ってから疲れた体に鞭打ってネットで赤毛山についてリサーチしてみたりしたのだ。  赤毛山といえば、あの運命の出会いとなった入学式の日、乙波が見たというUFOの編隊が飛んで行った山である。  無論、その目撃談はあくまで乙波一人の証言にすぎないが、それを別にしても、あの時、彼女の言っていた通り、この山の近辺では以前からUFOの目撃情報が多く、その筋ではかなり有名なスポットとして知れ渡っているらしい。  また、山中には原始時代の祭祀遺構と思われる人工的に組まれた巨石群がそこここに点在しているのであるが、これについてもトンデモ系の間では、この山が超古代に宇宙人の基地として作られたピラミッドであり、巨石群はその名残りであるとされているようだ……って、ピラミッドって全部石造りじゃないのか?  ま、そんな俺の素朴な疑問はともかくとして、そうした有名スポットということになれば、「今度のデート(?)の目的も、どうせUFOウォッチングかなんかだろう」と高をくくっていたのであるが……この、どう見ても探検する気満々の装備は一体なんなのだろうか? 「上敷くんこそ、そんな軽装備で行くつもりなの?」 「い、いや、ハイキングといったら普通、こんな格好だと思うんだけど……」
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