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コウくんも、本当に思いもよらなかったみたいで、目をぱちくりしながらそう言ってた。あたしは本当に心の底からガッカリしながらも、コウくんの表情が可愛くて、こういうところも好きだなって改めて思ってた。
「そっか、反対方向なんだ」
コウくんは立ち止まったままのあたしのところまで戻って、
「じゃあ、ここでバイバイだね」
そう言った。
「うん……」
「ナッツ、さっきから『うん』しか言わないね」
ガッカリした気持ちが大きすぎて、気の利いた言葉なんてひとつも思い浮かばないあたしは、コウくんが話すことにただ返事をするしかなかった。
コウくんが、息をひとつ、吐き出す。
呆れられたのかも、つまんないやつと思われたかも、愛想のないやつって思われたかも、なんだコイツって思われたかも。焦っていろんな想像が瞬時に頭の中をかけめぐった。
コウくんが、少しだけ唇を突きだして、尖らせるみたいにする。
あたしにはそれがどういう表情なのか、焦ってたからかもしれないけれど、わかんなくて。
どういう意味なんだろうって考えている自分の指が、少し震えてることに気付いた。
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