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しかし、考えざるをえなくなった、真面目に勉強せざるをえなくなった。運命を、感じた。
いつものバス停で彼女を見かけた。
初めて見たときよりも伸びている女神のような黒髪、非の打ちどころがない魅足、
吸い込まれて心奪われるその瞳。そして、何よりも驚いたのは身に纏うその制服。
彼女は近辺でもトップクラスの高校へ入学した。そしてそこは、バスの通り道に建つ高校でもあるのだ。
その時、僕の進路は唐突に決まったのだった。
今日はもう満足だ。話しかけられなくてもいい、仕方ない。そう思って新学期の再会は終わった。
どうやら僕は本当にやればできる子だったようだ。成績は異常なまでに上がった。
恋、とは素晴らしいエネルギーなのだなと思った。勇気を与えてくれることはなかったが。
変わらず雨の日に見かける彼女を励みに、僕は、彼女と同じ高校に合格した。
遂に彼女と同じ学校に通うことができる。これは僕にとって自身につながると思った。きっかけができる、学校でも彼女を見かけることができる。
しかし現実はそう甘くない。いや、問題はむしろ僕なのだろう。相変わらず何もできない何もしない、彼女を見ることしかできない。ただ話しかける、ただ彼女の気を引く。ただそれだけのことすらできない。なのに。
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